中川八洋氏によると、「西洋近代は、大胆に単純化すれば、三つの政治思想(主義)の流れをうんだ」といいます。(『正統の哲学 異端の思想』p.52)
一、真正自由主義(英米では「conservatism/保守主義」と言う)。
二、左翼的自由主義(米国では「liberalism/リベラリズム」と言う。80年代以降では「左翼」という意味となり、蔑視的ニュアンスがある)。
三、社会主義・共産主義に代表される全体主義。
「(真正)自由主義は、英国の政治史において明らかなように封建体制が漸進して発展したものであり、国家という歴史的な生成物を大切に保守するが、同時に国家の権力を制限することによる個人の自由を最尊重し、この自由を価値とする。つまり、自由を抑圧する全体主義を断固として排除する思想(主義)である。
自由主義と全体主義は水と油の対立関係にある」(同上 p.56)
「デカルト/ルソー的な近代の合理主義や個人の原子化(individualization)のドグマに対して、これに対抗すべくフランス革命を機に、保守主義(Conservatism)がエドマンド・バークを始祖として誕生したが、歴史・伝統/慣習/権威/偏見などが尊重される社会を擁護しない限り、この近代合理主義による政治の革新と個人の原子化とが政治社会をして最終的には暴力による全体主義体制に至らしめる野蛮な社会をつくることが鋭く先見され正しく喝破されたからであった」(同上 p.343)
日本の「保守」は左翼的自由主義者?
また中川氏は、日本の「保守」や「リベラル」に対して、以下のような見解も示しています。
「日本の『保守』は英米においての真正自由主義者ではなく左翼的自由主義者に当たるものが大多数であるのを特徴とする」(同上 p.53)
「『リベラル』(liberal)も、『自由主義者』ではなく、『革新派』とか『左翼人』という意味になっている」(同上 p.168)
以上、近代政治思想の三大潮流を踏まえ、「保守主義」(真正自由主義)や全体主義についてより深く学んで頂ければと思います。
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