ルソー著『エミール』について

フランスの政治哲学者ジャンジャックルソーの著書『エミール』(Emile)は、1762年に刊行された小説風の教育論ですが、その問題点について、中川八洋氏の著書から抜粋してご紹介します。


『エミール』の教育論とは

「日本での『エミール』の理解(正しくは誤解)は、子供が山や海の自然に親しむことを説いた自然教育の提唱、となっている。とんでもない誤読である。ルソーの自然は、文明社会以前の未開野蛮な状態を指す。つまり、ルソーの自然教育文明社会を破壊する反文明的な人格に子供を教育するという意味である」(『教育を救う、保守の哲学』p.255)


「ルソーが学校教育と家庭教育の双方とも一掃せよと激越に訴えるのは、ルソー自身が孤児でありその双方とも体験できなかったことからの、その双方を受けられる子供たち(人間)への‟憎悪の嫉妬心”による」(同上 p.258)


「日本における『人権教育』や『平和教育』などは、ルソーの『エミール』の系譜にあって、それは『共産主義的人間への改造を主眼とするものである」(同上 p.272)


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「『エミール』とは、20世紀の全体主義国家がすべて導入した、あの児童生徒に対する政治洗脳教育を論じたその先駆的な教科書と位置付けられるものである。健全な知育と徳育を目指す教育の原点を否定して、教育を政治のみに奉仕させることを論じた『人間の政治化』のための『教育の政治化にほかならない」(『正統の哲学 異端の思想』p.111)


以上、教育に携わる方は特に『エミール』の本来のメッセージについて、注意深く確かめて頂ければと思います。

保守主義の教科書

当ブログでは「保守主義」(Conservatism)とは何か、「保守主義」に基づく様々な見方など、日本における「真正の保守主義者」である中川八洋(やつひろ)筑波大学名誉教授の著書から紹介していきます。

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