フランス革命にも影響を与えた、フランスの政治哲学者ジャン=ジャック・ルソー(1712~1778)について、その本性を、中川八洋氏の著書『正統の哲学 異端の思想』からご紹介します。
ルソーの生涯
「ルソーはうまれてすぐ母に死なれ、10歳の時に父に棄てられた孤児である。青春時代は貴婦人のつばめ(愛人業)などで生計をたてた。正規の学校教育は一切受けたことがない。自分の五人の子供をすべてうまれるとすぐに棄て一瞥することもなかった」(p.77)
「少年ルソーは、野生動物に等しい浮浪児であった」(p.95)
「晩年になってますます被害妄想に苛まれるルソーが重度の精神分裂症であった」(p.91)
ルソーの描いた理想的な平等社会とは
「もともとルソーの描いた理想的な平等社会は羊の群れに人間を堕すことであった。ルソーは紛うことなく人間の動物化を絶対理想としたのである」(p.318)
「理想の人間像を荒野の野獣(野生動物)に見出す、(中略)これがルソーの『人間不平等起源論』の核心でありすべてである」(p.94)
「ルソーは文明の政治社会そのものを害悪だと激しくかつ言葉の限りをつくして非難して、この『人間不平等起源論』を結ぶのである」(p.99)
「ルソーの言う『平等』とは、人間がほかの人間への依存関係を消滅してすべての人間一人ひとりが対等状況になっていることだから、それは国家や社会における個人が原子化されている状態にほかならない」(p.146)
「ルソーは、ヴォルテールから『乞食の哲学』と揶揄されたように、すべての人間を(浮浪児や野獣に等しい)無産の貧者とする『平等』をもって平等社会を描いたのであって、それはまた富者を絶対に許さない不平等の教理でもあり、ルソーはすべての人間の“平等”など論じたことは決してなかった」(p.146)
ルソーとは
「ルソーとは、『自由』『平等』『人民』などの近代デモクラシーの言葉を巧みに使用しながら、その真の狙いは“自由”を否定し、“平等”を否定し、“人民”を否定する独裁的な全体主義国家を主張する狂気のイデオローグであった」(p.27)
「ルソーは読者をして、『現在の政治制度(政治社会)』を嫌悪しそのすべてを破壊する運動にひきずり込むその目的をもって、『自然人』『自然状態』を理想とし美化する高度な洗脳力の高い政治宣伝のロジックを展開したのである」(p.96)
「ルソーの哲学体系とは、(中略)学問の形式をもった本質的にはまさしく宗教そのものであって、しかも野蛮(未開、原始)を信仰する狂った宗教、人類と文明にとっては『悪の宗教』としか形容できない。まさしく近代の子宮からうまれた野蛮の宗教、それがルソーの政治哲学のすべてであろう」(p.91)
「マルクスと同じく、ルソーは道徳否定主義・道徳破壊主義のイデオローグである」(p.97)
「人間性(人間)の破壊そのもの、それがルソーの理念であり、平等社会こそこのための有効な方法であった」(p.101)
「ルソーは反・個人主義のイデオローグである」(p.100)
以上、ルソーがどのような人間で、どのような政治哲学者だったのか、上記のような観点などを踏まえて、ルソーの本性にさらに迫って頂ければと思います。
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