「『保守主義』とは何か?」で、
「保守主義(もしくはその周辺の哲学)は、全体主義との戦いにおいて構成された思想であって、それ自体で思弁的に作られた思想ではない。このため、保守主義思想を研究する場合には、それが『敵』とした全体主義の研究を決して欠くことができない」(中川八洋『保守主義の哲学』より)とお伝えしました。
そこで今回は、「全体主義」とは何かについて、中川八洋氏の著書より確認してみたいと思います。
「全体主義」とは
「20世紀の全体主義の起源はフランス革命である」(『正統の哲学 異端の思想』p.211)
「全体主義体制(国家)は、大きなものに限れば、歴史的に三つある。20世紀のレーニンのソヴィエト共産体制(ロシア)、ヒットラーのナチズム体制(ドイツ)、そしてその源流たる18世紀のジャコバン党独裁体制(フランス)である」(『保守主義の哲学』p.184)
「全体主義は自由と道徳が生きるための国家の生命源を根こそぎ破壊し尽くすイデオロギーである」(同上 p.184)
「全体主義運動とは、アトム化されて孤独と化した救いのないような個人からなる大衆組織を基盤とするものであり、その組織メンバーに対して前代未聞の献身と忠誠とを要求する」(同上 p.199)
「全体主義体制のテロルはまた、この『中間組織』の絶滅を極限まで推し進める。家族や友人の密告によっても死刑を実行するレーニン体制とは、家族も友人すらも信頼できないものとするためでもあり、これによってまた家族や友人関係という最下位の『中間組織』を潰したのである。いかなる史上稀れな暴虐な専制体制ですら、国家権力の圧制に対抗して敗北し処刑されるに至った者にも家族からの同情や慰めなど心の傷を癒すものは許容してきた。が、全体主義とはこれすらも何も存在させない、史上最悪の悪魔の体制である」(『正統の哲学 異端の思想』p.191)
※「中間組織」とは何か、その役割などについては、また改めてお伝えします。
「支配(独裁の党)階級でないすべての国民が必ず奴隷以下になる、人類史上最も野蛮で最も残酷な政治システム、それが全体主義である」(同上 p.192)
「『平等』という概念を絶対視しそれを強制させるシステムをつくると必ず全体主義体制になる」(『保守主義の哲学』p.205)
「『平等』を強制することは必ず人々を“隷従”させるに至る」(同上 p.210)
「デモクラシーが社会主義と融合すれば全体主義体制が生まれる」(同上 p.213)
「社会主義の実行はどこでも全体主義的になる」ハイエク
「オーウェルは、自由社会に絶対的な善の社会を夢想する浅薄で無責任な知識人の存在する限り全体主義が発生する危険は立ち去らない、と憂慮する点でエドマンド・バークにも通じている」(『正統の哲学 異端の思想』p.292)
「伝統とこれに基づく権威は、国家の全体主義化を阻み国民の自由を守る砦である」(同上 p.332)
【全体主義体制の六つの特徴的要素】
一、社会における人間の生活のすべてを律するイデオロギーの強制
二、一人の独裁者を戴く、独裁党の支配
三、肉体的・精神的な死その他の恐怖の体制
四、通信を含む統制手段の、独裁党による完全な独占
五、すべての軍事力の、独裁党による完全な独占
六、全経済に対する中央指令
(C・J・フリードリッヒら『全体主義独裁制』より)(『保守主義の哲学』p.204)
以上、「全体主義」とは何か、さらに理解を深めて頂ければと思います。
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